森本草介
もりもとそうすけ東京芸術大学美術学部油画科在学中に安宅賞を受賞。国画会第37回展に『聚』を初出品して初入選。52年、銀座にて初の個展となる森本草介展開催。精密な写実で、女性像や風景、卓上静物を格調高く描く。サントリー賞、昭和会優秀賞受賞。
森本草介作品の査定のポイント
森本草介査定のポイント
森本草介はその精緻な筆致の女性像が人気の写実画家で写実現在の写実ブームの先駆けを担った作家でもあります。
根強い人気と寡作で作品数が少ないため人気モチーフは自ずと高く取引されます。
【テーマ・図柄】 Q:高く売れる図柄ってあるんですか?
美術品は描いてある図柄によって、評価が大きく変わります。
やはりその作家の人気テーマのほうが評価額も高いものです。
写実画の第一人者、森本草介の場合、静物画、風景画も精密な筆致で素晴らしいものを残していますが、
人気が高いのはやはり女性像ですね。
現在のいわゆる写実ブームを牽引してきたのは間違いなく森本草介でしょう。
他にも、現代につながる細密・写実の流れを作ったのは野田弘志、青木敏郎の両先生の力もありますが、
現代の若手がこぞって端正な写実を描く流れを作ったのは森本草介が編み出した絵画構成の与えたものが大きいと思います。
森本草介の女性画は、着衣・ヌードとも人気があります。昭和54年頃見出した一人のモデルを描いたものが特に好まれるものでしょう。
評価に必ずしも影響があるとはいえませんが、部屋への飾りやすさなどから考えて、
着衣のものが一般的な購入に好まれるという傾向はあります。
【出来栄え】 Q:制作年代は評価に影響しますか?
同じ作家のものでも、どうしても出来栄えは作品や年代によって異なります。
描きこみのこまかいものや、その本人の全盛期の作品は評価が高くなります。
森本草介の場合、女性像が特に人気なので、上記に記したように、
女性モデルがみつかり制作を始めた1979年(昭和54年)以降の作品と言えそうです。
また、画風自体もこの前辺りから変わっていきます。色使い、描写、構成ともに次第に変化していきますが、
初期のものは比較的色が濃く、若干構成も拙く、後年のものと比べると評価は落ちます。
森本らしい丹精で統一感のある色彩と画面設計は試行錯誤の後出てきたものと思われます。
【状態】 Q:額に傷がついています。直してから出したほうが評価は上がりますか?
森本草介作品に限らず、美術品を評価するうえで状態はとても重要です。
ヤケやシミ、破れ、絵の具の剥落、ヒビなどがある場合はその分評価が下がってしまいます。
ただ、表装や額が痛んでいても、絵自体の評価はほとんど変わりませんので、ご自分で直さず、そのままお持ちください。もし、贋作だった場合、余計な出費になってしまいます。
精緻な森本の油彩画ですが、保存状態が悪ければ、簡単に痛みは出てしまいます。
コンディションの低下は評価に深刻なダメージを与えますので、掲示の際はもちろん、保管時にもぜひお気をつけください。
保管する場合は、私どものような画廊にご依頼の上、クリーニングをご検討ください。
腕の悪い職人に頼むと、状態の劣化を招くこともありますし、価格もリーズナブルでない場合もあります。
念の為付記しておきますが、森本草介の贋物は他の画家と同様、存在します。
完璧な丹精さを誇る森本作品を模倣しようとする輩が存在することは驚きですが、
実際にありますので、特に購入の際にはお気をつけください。
【サイズ】Q:作品は大きければ大きいほど評価額も高くなりますか?
よく号あたりいくらという美術関係の本がありますが、「号あたり」価格は売買の実態とは遠く離れているのが実態です。
また、大きさと価格についてですが、すべて比例するわけではなく、4号以下のもの(1号やS.M.など)などは割高傾向にあり、
極端に大きなものは反比例することすらあります。
ただ、これは一般的なお話。
大きければ大きいほど高いとう法則は必ずしも言えませんが、森本先生の場合は、そう言っても差し支えないかもしれませんね。
なぜなら大きなものには大きな作品でないとできない表現があればそれは評価するに足りうるからです。
物事を単純化して説明し難いものですね。
なお、森本先生の場合は、画廊や百貨店での販売価格も、引取時の価格もしっかりしている場合が多いです。
なぜならニーズが比較的底堅いからです。
【鑑定書】Q:鑑定書がありません。取ってから持ち込んだほうが良いですか?
鑑定書がある場合は必ず作品とともにお持込ください。
まだお亡くなりになってからまもないので、殆どの作品は鑑定証が添付されていないと思います。
必要であれば弊社では鑑定書取得の代行も行います。お気軽にご相談ください。
今の所、すべての作品に鑑定が必要ということはありませんが、必要に応じて鑑定証の取得もさせていただきます。
森本草介の作品例一覧
森本草介の査定は絵画骨董買取プロにお任せください
森本草介先生は、現在のいわゆる写実ブームにつながる、細密で繊細な女性ヌード描写を確立した非常に大きな存在の方です。油彩による細密描写は当然ヨーロッパに始まるわけですが、日本の画家は明治依頼それを「日本の画」にするために様々な試行錯誤を繰り返してきました。
岸田劉生に象徴される明治の油彩画家は、ものごとの存在感を切り取るような、日本画や中国絵画の思想と油彩描写を合体させようとして、近代の中川一政のような「文人油彩画」の世界を形成しました。ですが、黒田清輝のような濁りのない『美』を見出そうとする勢力も明治には存在しました。
森本草介のような「写真のよう」だが写真では決して表現することのできない高度に理想化された「美」の世界はあるいは黒田清輝の流れを引くものと言えるかもしれませんが、現在はある意味主流とさえ言える写実絵画の世界自体は、戦前生まれの森本草介らが切り開いてきたもので、20世紀の戦後画壇では主流とは言えないものでした。ホキ美術館の収集のきっかけとものあった森本草介の作り出した世界は、今や日本の若い画家におおきな影響を与え、21世紀の日本油彩画の主流を占めるに至っています。光と闇で構成される中世ヨーロッパ写実絵画の世界と比べると、ある種の非現実的な日本的理想世界を描く森本草介の世界は、ある種の孤高さえ感じさせます。今のようにおびただしい数の写実画家が輩出した現象を森本自身がどう捉えていたかはわかりませんが、彼の画業が極めて広く受け入れられたことは間違いのない事実で、晩年の仕事にまずますの充実をもたらしたことでしょう。
森本草介の作品は油彩画に限らず、鉛筆やクレパスなどによるデッサン、スケッチ類にも極めて優れたものがあります。地方のデパートで以前お求めになったものなどで、手放せるものがあれば、ぜひお尋ねいただければと思います。高額に評価させていだきます