酒井抱一
さかいほういつ姫路城主酒井忠迎の次男として江戸に生まれる。若い時より能、茶、俳諧を嗜み一流の文化人として成長する。画は初め狩野高信から狩野派を学び、南蘋派の花鳥画、浮世絵、円山派、土佐派など広く研究した。1797年(寛政9)に出家し抱一と称す。寛政期半ばより尾形光琳を知りその画風に傾倒、模写などによってその装飾的表現を学んだ。光琳とは異なる抱一の特徴は、俳諧的な情緒感・詩情性である。眼前の出来事を瞬時にとらえてその因果関係を探ったり、自然の中の草花の一瞬をとらえ、その前後の出来事を想像させる手法は、文学的な叙情性にあふれている。それは抱一を祖として始められた「江戸琳派」の特徴となった。
酒井抱一作品の査定のポイント
江戸琳派の祖、酒井抱一は装飾性豊かな琳派的表現と、江戸の粋を併せ持った瀟洒な画風が特徴です。
俵屋宗達、尾形光琳に続く琳派の代表的な絵師として広くしられ、海外でもファンが多い絵師です。
【テーマ・図柄】Q:高く売れる図柄はありますか?
美術品は描いてある図柄によって、評価が大きく変わります。
やはりその絵師の人気テーマのほうが評価額も高いものです。酒井抱一の場合、
どのモチーフが高いとか低いとか、抽象的に論評するのはかなり難しいですが、
やはり仕事が大きくて絢爛としたものが高いといえるかもしません。
そもそも、酒井抱一の場合、その落款を記したものの殆どが贋物です。
本当はこの贋物という言い方じたいがまた誤解を招く言い方ではあります。
あたかも真贋が明解である前提があるかのようだからです。真贋をいうよりも、
「よいもの」そして「伝来の良いもの」さらには「シダイ(表具、箱、極書)がよいもの」さらに「重要な画集に掲載されているもの」、
このあたりをクリアーしているか否かが評価を分けます。
そのうえで、表現を見ていく必要があるでしょう。基本的に酒井抱一の描くものは「花鳥風月」、なかでも草木花が多いですが、そのなかでも特に出来栄えがどうか、ということが重要なポイントになるでしょう。
【サイズ】Q:作品は大きければ大きいほど評価額も高くなりますか?
よく号あたりいくらという美術関係の本がありますが、「号あたり」価格は売買の実態とは遠く離れているのが実態です。
抱一の場合、基本は掛け軸と屏風作品なので、「号」などなんの関係もありませんが、大きい作品の方が高評価の可能性は高いとは言えます。
また、重要なのは描ぶりであっさり、さらっと描いたものとしっかり背景まで描き込んだり、良い絵の具を使い、状態も良いものを比べれば、もちろん後者のほうが評価は高くなります。
なお、屏風、色紙等をお持ちの方もぜひお見せください。昨今の住宅事情で屏風の需要が下がっていますが、一方で海外の方からの需要もあります。
【鑑定書】Q:鑑定書がありません。取ってから持ち込んだほうが良いですか?
酒井抱一の場合、江戸の絵師のため、鑑定機関はありません。よって、そのままお持ち込みいただいて結構です。こうした江戸の絵師の場合なお、その作品に「鑑定書」のようなものがついていたとしても、当時扱っていた画商が独自に付けたもので法的効力はありません。
また、なかには付いている方がむしろ逆効果といえるような鑑定証も見かけます。
ただし、その「鑑定」が意味があるかないかは、専門的な眼が必要なので、勝手に処分などすることは絶対におやめ下さい。
ただ、「鑑定証」を今現在から取得する、ということには何らの積極的な意味もないことにはご留意下さい。なお、ここでいう「鑑定」とは真贋のことで、「査定」=売買の評価、とは意味が違います。
酒井抱一は殆どの作品を網羅したと思われる大型本の画集が有り、これに掲載されているか否かは大きな意味を持ちます。ただ、この時代のものについて本の掲載が絶対の権威というわけにもいかないのが難しいところです。テレビ番組が大衆にもたらした「真贋」絶対主義を現場で強弁するのは禁じ手でもあります。総合的見地できちんと真贋および評価をご説明いたします。
【額】Q:表装が傷んでいるのですが、直してから持ち込んだほうが良いですか?
これはあらゆるケースでよく頂くご質問です。特に酒井抱一は江戸期の人ですので、
作品が今までなんのダメージもなく保存されていることは稀です。
屏風などの場合、明治から昭和にかけてのいずれかの時代に多少なりとも修復をしているケースが多いと思いますが、
そのままのものもあるでしょう。
残念ながら、一般の方が表具を地元の表具屋さんなどに頼んだ場合、価格がかかりすぎているケースがほとんどです。修復したくなるお気持ちは十分理解できますが、その前にぜひ一同ご相談下さい。適切な修復方法などをお伝えします。
酒井抱一の作品例一覧
酒井抱一作品の相続
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酒井抱一はいわゆる琳派の最後の画家ともいえるでしょう。一般的には「江戸琳派の祖」とも言われていますので、「最後」というのは私の強弁です。ただ、「光悦」「宗達」「光琳」の三者がいて、江戸後期に抱一がいることで、「琳派」という流れが確立したといえるのではないかと思います。その後も琳派の流れは続き、中村芳中、鈴木其一、池田孤邨、そして明治の神坂雪佳が最後を飾りますが、その後は日本画の流れに溶け合って、前田青邨・秋野不矩、菱田春草、竹内栖鳳、川端龍子などに広く受け継がれて現在につながる画風ともいえるかと思います。その特徴は自然と暮らしとの調和、工芸と絵画の融合、絵画のデザイン化、先達への私淑、たらしこみ技法、リアルよりも飾り・遊び、日本的雅(みやび)な感覚、などで、もう現代のアーティストがほぼ無意識に取り込んでいる日本的モチーフの基礎のひとつとなっています。江戸初期に萌芽したその作風を現代につなぐ中継点が酒井抱一のしごとだったといえるでしょう。江戸初期の琳派の大胆で原初的な感覚と比べると抱一のそれはもう少し定型的で硬いですが、作品量・研究量は圧倒的です。
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