銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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草間彌生展、無限の不幸と幸福。

   


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草間彌生展に行ってきた。

近頃、私達の画廊では、以前にも増して草間彌生作品に関しての 問い合わせが増えている。現在、六本木の新国立美術館での 草間彌生展の影響も少なくないだろう。

今回の展示の特徴は幼少期からの展示から今年の作品まで展示することを通して、彼女が何故絵を描いてきたのか、どのように戦って来たのがわかることだ。

経済的には豊かだが問題のある家庭に育った草間は、幼くして幻覚に苦しめられ、必要に迫られて絵を描いた。少女の草間は毎日、死にたいと思い、そして今も毎日、死にたいと考えているという。展覧会の冒頭に掲げられている文章に「命がけ」で美術に打ち込んで来たとあるが、彼女にとってこれはまさに実感なのである。

だが青木繁や菱田春草などの夭折の画家がイノチガケで生命を早く燃やしつくしてしまったのと比べて、彼女は長い人生を得て、今日の成功を掴んだ。今でも入院しながら活動を続けている彼女は、死への衝動という負荷を、世界とつながる為の、いわば宗教的な啓示に転化して生きて来た。10歳の少女に訪れた不幸は多分90になっても100になっても描き続けるであろう老少女に永遠の生命を与えたのだ。

草間がこんにち、これ程の名声を得たのは、オブセッションという主題のもと、生み出された繰り返しと集積表現の数々がウォーホールなど戦後ポップアートの潮流に少なからず影響を与えた事が評価されたからだという。アウトサイダーアートの最初にして最大の幸福と成功を掴んだ例ともいえるだろう。

無限の宇宙と交信して不幸も幸福もないまぜにして人々を陶然とさせ、ミュージアムショップに並ぶ長い列(50メートル位あった。。)を作った。彼女のインタビューを聞いていると、決して純粋無垢というわけではなく、あたしはナンバーワンだの、あたしの財産どうするつもり?と周囲に語りかけたり俗っぽいことも隠さない。そういうところも彼女の魅力である。

聖俗併せ持つ彼女の力に触れたくて、もはや彼女の作品を得るために世界のコレクターは、何十万ドルであろうと投資を惜しまない。

彼女の望み通り、彼女の苦難な道のりは多くの人に希望を与えるだろう。

 
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