銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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柿沼宏樹個展「CHICKEN」CHICKEN SAPIENCE誕生の裏側

   

こんにちは、ぎゃらりい秋華洞の田中です。今回は、現代美術家の柿沼宏樹先生をお迎えして、彼の新作シリーズ「CHICKEN SAPIENCE(チキンサピエンス)」について深く掘り下げていきます。2025年5月に銀座のぎゃらりい秋華洞で開催される個展「CHICKEN」に向けて制作されたこの3Dフィギュアは、フィリピンのアートフェアで大きな反響を呼び、現地で完売するほどの人気を博しました。

インタビューで柿沼宏樹氏と田中が話す様子

「チキンサピエンス」とは何か?

まず、この作品の中心にある鳥のモチーフ、いわゆる「チキンサピエンス」とは一体何なのでしょうか?柿沼先生によると、制作当初は「異様なものを作りたい」という強いイメージがあったそうです。しかし、制作を進める中でその意味合いが変化し、今では「何だかよく分からないもの」になっているとのこと。

それでも、あえて言うならば「鳥」や「鶏」といった食べ物としてのイメージに対し、擬人化を施すことで「尊厳」を与え、弱さと強さという二面性を持たせています。これは、人間の私たちともどこか重なる要素があるため、単なる動物のフィギュアではなく、観る者に深い共感や考察を促す存在となっています。

チキンサピエンスの立体モデルの詳細

食べ物としての「チキン」からの発想

多くの人から「なぜチキンをモチーフにするのか?」という質問を受けることもあるそうです。特にフィリピンでは、「ジョリビー」というチキン料理チェーンが国民食のように親しまれており、その文化的背景が作品の人気に影響しているのかもしれません。

柿沼先生は、「伝えるのが難しい」としつつも、「掴みどころのない面白さ」を感じてもらえれば良いと語っています。つまり、単なる食べ物のイメージを超えて、観る人が自由に感じ取れる余地を残すことに意味があるのです。

「チキンサピエンス」誕生の経緯と制作秘話

この「チキンサピエンス」は、柿沼作品の中で長年にわたり登場してきた「鳥人間」モチーフをさらに発展させたものです。今回の3Dフィギュア化は、フィリピンのアートシーンで活躍するアートトイ製作チームからのオファーがきっかけでした。偶然の巡り合わせで実現したこのプロジェクトは、柿沼先生自身も驚くほどクオリティの高い仕上がりとなりました。

チキンサピエンスの自立する様子

特にこだわったのは、このフィギュアが「自立する」こと。足が小さいために不安定になりやすいのですが、スケッチや3D設計図を何度も練り直し、立った時のバランスを追求しました。これにより、見る角度によって表情が変わるような、掴みどころのない顔の造形も実現しています。

制作過程の苦労と喜び

制作は決して順調ではなく、試作段階でのやり取りは大変だったと柿沼先生は振り返ります。最初は無理かもしれないな、とネガティブに考えたことも。しかし、最終的に出来上がったフィギュアは、重さや質感も含めて想像以上の仕上がりで、作り手の技術と情熱に感銘を受けたとのこと。

柿沼宏樹が制作に満足した様子

作品の独自性と美学

柿沼宏樹の作品は、動物や異生物をモチーフにしながらも、どこか人間らしさや魂を感じさせる点が特徴です。一般的な彫刻では、目が鋭くリアルに作られることが多いですが、「チキンサピエンス」はむしろ掴みどころのない、曖昧な表情を持っています。

これは、彫刻の伝統的な技法や美学に逆らう「逆張り」のスタンスとも言えます。例えば、同じくぎゃらりい秋華洞で取り扱う坂田源平さんの作品にも通じる部分があり、そうした独自の視点が作品の魅力を際立たせています。

チキンサピエンスの顔のアップ

可愛いキャラクターとも違う「チキンサピエンス」

「チキンサピエンス」は単なる可愛いキャラクターとは一線を画し、その曖昧で捉えどころのない表情が観る者の心を掴みます。これは柿沼先生のアートにおける大きなテーマであり、多くの人々が共感を覚えるポイントでもあります。

作品が人気を博したことについては、「特に何も考えずに作っていた」と謙遜しつつも、次回作ではもう少し計画的に進めたいとのユーモアも交えながら話してくれました。

2025年個展「CHICKEN」展覧会情報

この「チキンサピエンス」を含む柿沼宏樹の新作は、2025年5月10日(土)から17日(土)まで、東京・銀座にあるぎゃらりい秋華洞にて展示されます。会場では、新作絵画とともにこの3Dフィギュアを間近で鑑賞できる貴重な機会です。

  • 会期:2025年5月10日(土)~17日(土)
  • 休廊日:5月11日(日)、12日(月)
  • 時間:10:00~18:00
  • 会場:ぎゃらりい秋華洞(東京都中央区銀座6-4-8 曽根ビル7F)
  • 入場無料

なお、フィギュアは数が限られているため、今回の販売は抽選方式となります。購入希望の方はぜひ会場での応募をお忘れなく。価格については現場での確認をお願いしていますが、手に取りやすい設定ですのでご安心ください。

ぎゃらりい秋華洞の展覧会案内

最後に

柿沼宏樹の「チキンサピエンス」は、動物と人間の境界を曖昧にし、見る人それぞれの解釈を誘う独自の存在感を放っています。フィリピンでの成功を経て、日本での個展開催に向けてさらなる注目を集めています。

今回の3Dフィギュアは、単なるアートトイを超えた、柿沼先生の世界観を立体的に体感できる作品。ぜひ銀座のぎゃらりい秋華洞で、その魅力を直接感じてみてはいかがでしょうか。

今後も柿沼宏樹の新たな挑戦に目が離せません。ぜひ展覧会に足を運び、彼の創造の世界を存分にお楽しみください。

柿沼宏樹インタビュー「CHICKEN」SAPIENCE誕生の裏側【銀座ぎゃらりい秋華洞】

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