銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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大倉集古館のローマ

   

大倉集古館の「追憶の羅馬展」-館蔵日本近代絵画の精華
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/shukokan/roma.html

母親から土曜日ふいに電話がかかってきて、アンタすごく良かったからいきなさい、
と言われて素直に家族を連れて出かけた。

これはたしかに、凄い作品ばかりであった。これ殆どすべて館蔵品なので、普段から凄い美術館とも言えるのだが、この昭和4年の羅馬日本展覧会の出品は、日本近代画家のうち、日本画部門の優秀な人がすべて網羅されている、といってもよいのではないか。すべての作品が昭和4年の作なので、時代横断的に、作家の力量がわかって非常に面白い。日展、院展の境もとっぱらわれているのも特長だ。この時代、日本画の黄金時代であったことがうかがわれる、力作揃いであった。

どうだ!これが日本だ!と気合いが入りまくった作品ばかりである。

戦争に日本が突入する直前に開かれたこの展覧会であるが、イタリアのみならず、ヨーロッパ各国、アメリカからも観客が訪れ、全部で16万人以上が見たという。当時の羅馬市民の数の20%にのぼるらしい。
で、当時の外国人の評判が興味深いのだが、実は、展示全体のすばらしさを伝える記事が多く、個別の作品について触れる記事は比較的少なかったという。いささかとっつきにくかったようだ。

図録の草薙先生の解説にある引用によれば、評判の高い作家は、玉堂、栖鳳、観山。評判の良買った作品は酒井三良「豊穣」栖鳳「蹴合」、ほか観山、橋本静水、関雪。前田青邨の代表作「洞窟の頼朝」も評判はよく、動物画という日本独自のジャンルも注目されたという。水墨画も人気で、玉堂は評判になるが、何故か大観は黙殺され気味。大観は観念的となる傾向があるからであろうか、と草薙氏は指摘している。

大観もとても良かったけど、たしかに外国人にはわかりにくいものが多いかもしれない。岡倉天心の純粋な師弟であった(日本精神の体現を精神の支柱とする)故か、皮肉にもかえって海外に評価されにくいとは。負けるな大観。

ところで、ホテルオークラにはお知り合いの店も入っているし、この美術館は私の仕事をしていたら当然見ておくべき美術館であり、いままで訪れていなかったのはひとえに怠慢とも言える。

この美術館、素晴らしい事に、中学生以下の子供連れは親もタダ、したがって、4人家族全員タダである。
で、タダの代わりに子供たちは感想文を提出する決まりになっていた。
okura.JPG
もう子供の頃からさんざん美術館に連れて行って、すっかり美術館嫌いになった、二人であるからして、文句たらたらかと思いきや、なにやら熱心に見ては感想を書いている。親がもう見終わって休んでいても、なかなか終わらない。

子供の感想文たるやなかなかのものであった。「大観の作品はやさしい雰囲気だけど、人の暮らしが描いてあって親しみやすい」「すごく細かく書いていて、どうしたらこんな風に書けるのだろうと思って」など、大人の書きそうな感想も多い。(実際の文は提出してしまってないので適当に書いた)。

 

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