銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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ミュンヘン

   

日曜日・月曜日(祝日)は台風も来るというので(たいしたことなかったけど、東京は)家にこもって「構想」を練っておりました。この「構想」は社内で発表しますが、一番大事なのは、スタッフが生き生きと楽しく働ける職場を作ること。

それはともかく、話題はかわりますが。

日曜の夜はチト映画を見たのです。「ミュンヘン」。なんとなく妻が録画したのを見たのだけれど、非常にダークな暴力とサスペンスで、こういう地味でリアルで本当に怖い映画を撮る人がいるのだな、どこの国の人かな、そもそもこんなシリアスな題材でよく撮れたな、とおもったら、スピルバーグ。(すみません、知らなかったのです)

納得。この題材を撮ってのける政治力と、凄惨でリアルな暴力(とくに弾着がすごい)を描ききるのは、彼しかいないだろう。

題材は、要するにPLOのゲリラを、イスラエルが暗殺していく話で、こんな歴史の裏側を、いくら書籍にされているとはいえ、今も政治的にデリケートな話だろうに、描こうとする、ユダヤ映画人としての使命感を感じた。

しかし非常に悲しい映画である。登場する人物の誰もが自分の「HOME」すなわち家庭や祖国を護ろうとするために、血で血を洗う凄絶な殺し合いに巻き込まれていく。そこに描かれているのはゴルゴ13のような冷血な殺人者ではなく、愛しい妻や子どもとの安らぎの時間を何より愛する、愛する故に心がカラカラに乾くまで他人を殺し尽くさなければならない哀しい暗殺者である。

ユダヤにもパレスチナにも味方せず、映画人として、この今も続く抗争に、「家族
」という普遍的かつスピルバーグにとっては永遠のテーマで描いたこの映画は、重層的で、生きることの意味そのものを問いかけてくるようです。

そういえば、「南京大虐殺」をテーマにした映画が10本?も今用意されているとか。どこかで読みました。スピちゃんのような複眼的視点で日中戦争を描いた作品が混じっていればいいのだけれど、期待は出来ないのだろうな。誰か、日本の過去のありのままの姿を、きちんと弁明してくれるような監督や映画会社が出てこないのだろうか。

ときどき、軍隊を英雄視したような日本映画があるが(こないだ石原慎太郎が監修したような)、あのニュアンスもあまり興味がない。硫黄島からの手紙、は良かったが、ああいう精緻さで、大陸の戦争を描く映画が、高い芸術性を持って、世界に届けられたら、いいでしょうね。

殺された人数がどうとかいうプロパガンダや論争を超えて、そこに起きた人間模様を映画は描くべきでしょうね。この問題はあまりに政治性が強すぎて、難易度は高いだろうけれども。ホウシャオセンとか周防監督とか、中田秀夫さんとか、やっていただけないもんでしょうか。いややっぱりアメリカ人がいいのかな、一応中立ということで。

 - エクストラ

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