銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

*



板橋区立美術館「これが板橋の狩野派だ!」

   

うちのスタッフもブログで言及していることは、前にも書いたと思いますが、例の板橋区立美術館「これが板橋の狩野派だ!」にいきました。


結論からいいます。絶対行くべき。この美術館は、狩野派の美術館なのです。ですから、狩野派(すべて館蔵品)の展示には気合いが入っています。フツウの美術館なら、常設展はのんべんだらりとやって、企画展に命賭ける、みたいなことが多い(またはそう見える)ですが、ここは違います。


まず、玄関で「え?」


入場無料でした。


さらに、入るといきなり(写真とっておくべきだったな)、入場者カウンターのセルフ。大人、高校生、子供、と表示がついているカウンターが三つ、だったかな。博覧会の受付などで、アルバイトの人がカチャ、カチャと入場者をカウントするアレです。自分で押して下さい、と受付の人に言われます。人を置くのなら、その人にやらせればいいのに。。。とも思いますが、省力化&ユーモアを感じさせるお出迎え。c6191625.jpg


さらに、写真撮影OK!。海外の美術館では珍しくないようですが、日本で此処までハッキリ明示しているのも珍しい。記念写真を撮ってもらうことで、入場者も嬉しい、美術館は宣伝になる。


 



屏風展示風景そして、最初の展示は屏風。


さすが板橋、屏風は本来畳の部屋で座って見るモノ、という基本に忠実。もう間近で見られます。さわることさえできてしまいそう(しないで下さい)。


屏風には、わかりやすーいキャプション。家族連れを意識して、子供にもわかるように書いています。画題も、もう勝手に変えている。


 


  たとえば下のように、狩野寿信という人の屏風の屏風作品名は「本来」は「徒然草図屏風」なのです屏風解説が、ここでは「人生イロイロ」。板橋は、そして「紙本着色(しほんちゃくしょく)」なんて書きません(小さく書いてますが)。


「紙に着色。」  ・・シンプル。


「金地金砂子散らし」は、「金箔を貼り、金砂子をまく」。


ようするに美術館とかアカデミズムにありがちな「気取り」「権威付け」を全て剥奪して、さあどうぞ楽しんで下さい、という姿勢が一貫しています。とくにこうした館蔵品展はのびのびとしていて、板橋テイストが一番出ているのではないでしょうか。まさに「大人の修学旅行」向き。でも、子供も楽しめそうなので、今度は子供を連れて来てみます。


作品の紹介をしていませんね。充実してます。図版は載せませんが、英一蝶。今日展示していたのは、酔いつぶれた一休さんを小僧さんが起こしている、というような図ですが、久隅守景の国宝の「納涼図」を思い出すほのぼのしたテイスト。だけど一蝶はやっぱり巧い。繊細さがある。私は英一蝶のような美術商になりたい。島流しにはなりたくありませんが。


 


大黒様これはスゴイ。典信、栄川院「大黒図」。写真じゃ解らないでしょうが、滅茶苦茶デカイ。横が二メートルもある。表具の幅を入れれば、横たわったジャイアント馬場(209センチ)よりも大きい。非常におめでたい図なので、巨大な床の間をしつらえた大金持ちがいたら、板橋さんにゆずってもらっては如何でしょう。


感動したので、写真を撮る余裕はなかったが、なんといっても良かったのは、「河鍋暁斎」の「鍾馗に鬼図」の双幅(二本でセットの掛軸)でありました。この筆力、構成力はタダモノじゃない。残念ながら、この人のパワー、テクニックをしのぐひとは今はいませんね。


今回の展示で、板橋さんの主張を感じたこと、そして実際思ったことは狩野派=ワンパターンのつまらない御用絵師、という思いこみは捨ててかからないと駄目、ということ。


古美術の現場では、たしかに、「ああ、狩野派ね、また探幽の贋物か」、とか「●ノブさんの梅、はい、1万円」みたいなケースが多い(つまり量産されてた粗書、粗悪品、贋物も多い)のですが、狩野派は、ひたすら、粉本主義(実際のモノを写生するのでなく、きまった描き方のお手本を練習することを基本とすること)、ということだけではなくて、非常に積極的に、様々な流派や時代の影響を受けて、ダイナミックに推移してきたこと。浮世絵風、琳派風、土佐派風、などなど。


御用絵師、職業絵師、ということで、さして「芸術」として、気取ってないのだけど、それぞれの才能に応じて、人にサービスしよう、楽しませよう、という意図を感じて清々しい。「ゲージツ」しているより「職人」の潔さがある。現代から見た後付の理屈かもしれませんが。なんだか幸福な書画たちでありました。


粉本主義ついでにいえば、狩野派の本をまとめられた山下先生は、「今の日本画家の教育には、狩野派の粉本を無理矢理勉強させろ!」みたいな事をおっしゃっているが、同感です。友達の無名の日本画家には、似たようなことを言ったことがありますが、やらないだろうなあ、多分。そういう事をする学校を作りたい、というのが私の密かな夢。


そういえば、展覧会のパネルに面白いことが書いてありました。


1.狩野派は今も活躍しているの?・・・という疑問に、「画家としての活動は昭和の時期を最後にいらっしゃいませんが、今もその血を受け継いでいる方たちが大勢いるはずです。当館では、その方たちを探しています。」


狩野派ロマン。・・・「タンユー・コード」。隠された狩野派伝説の謎を解く、みたいな映画を作ったりして。。


2.狩野派の絵は買えるの?・・という疑問には「今流行りの骨董市などで変えるはずですが、贋物も多いので、気を付けて」と答えていますが、


この答えは正しくは「東京銀座の秋華洞さんで通販でも買えます。贋物はおいていないので安心です」です!(^^ゞ 

 - 日常

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。