銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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メトロポリタンなど

   

昼飯をオークション会社の方とご一緒する。外資系に勤めるNY在住の女性、というとなんかバリッとしてピリッとしたややコワメの方??も予想していたが、そんなことはない、いたって柔和で親切な若い方。

 

下見会場に案内していただいたが、ロンドンで行われるオークション、家具のオークションなど、さまざまな下見会が同時に行われている。家具はおおむねイギリスあたりの貴族の調度品だろうか、最低10万ドルはするようである。


昼は日本食、おそばやさんに行く。「日本」というストレートな名前の店。。。

話をしていて思った。

オークション会社にいると、現代アートも、西洋も東洋も、すべてなんというか同一平面のアートあるいは商品として見れる。それは芸術論とか難しいことでなくて、お客様の好みとか、非常に現実的な視点。

 

コンテンポラリーアート、はNYでは人気だそうだが、奈良良智とか村上隆とか、日本のアーティストの評判はどうなんだ?とこちらは「日本代表」の事を気にしてしまうが、あまりNYでは「日本人」かどうかは関係ない。現代アーティストの一人、に過ぎない。成るほど。現代の地平、という意味では、国は関係ないのだ。

 

関係ないかもしれないが、奈良氏の絵など、噴出しの台詞が英語で書かれていて、なんかもろNYマーケット意識していていやみに見えるが、逆に何らかの意味でマーケットをまるで意識していない作家というのも結局成長しないのかもしれない。

 

他にも語るべきことは色々ありますが、やたら公開してはまずいと思いますので、とりあえずここまで。

 

午後はメトロポリタンにご一緒させていただく。

 

メトロポリタン美術館はセントラルパークの中央東側にある。世界三大美術館のひとつに数えられる、巨大かつ非常にコレクションの幅が広い美術館である。

 

ここ、よいです。


 

NYの印象がいっぺんに良くなった(単純)。入場料は15ドル、まあ普通だけど、NYの物価からすれば安いのではないかな。セントラルパークに遊びに来た人がその足で場内を散策しているという感じ。雨の日は非常に込むという。つまりパークの代わりになっている。

 

NYの美術館の特徴なのかは知らないが、順路というものは特にない。アジアの部屋、イスラムの部屋、など区分けは勿論あるけれど、小部屋どうしは、縦横テキトウに繋がっているので、好きなように見て回れる。気に入った絵のところへ一直線で行って、ずーっとその前にいるもよし。写生するもよし。記念写真を撮るもよし(Noフラッシュですが)。アートというものを身近に感じるしかけができている。

 

所蔵品は凄いです。今回は隣に、「落札価格」を知っている方がついていたので、すべて時価がわかってしまうのですが、ゴッホとか、ルノワールはいうまでもないけど、そのほか現代美術でも、数十億を下らないものがいくらでもさり気なーく裸でおいてある。日本の美術館ならガラスケース+お堀でも作るんじゃないだろうか。間違えて壊したらどうするんだろう、などとお話した。

 

まあ、値段からはいるとまたオカシクなるけど、要するに人類の宝。日本の美術館の場合、特に日本画や茶道具は、壊れやすい、光に弱い、などの弱点があるので、守ろうとするのは致し方ないとは思います。ただスケッチぐらいはさせてやってほしいナ。明日の日本を作るのに。

 

やはり日本の美術館は「お上」の意識があるからだろう、なんとなく、ふとっぱらでなくて、囲い込もうとするあたりは。メトロポリタンはなんと私立なのだけど、たぶん国立でもそう運営はかわらないんじゃないか。

 

アメリカはゴーマンで、だめなところもあるけど、こういうところはよい。つまり、人類の宝、国民の宝、みんなのもの、と思ってるんじゃないかしら。日本は徳川家のもの、とはもう思っていないだろうが、徳川家が権力を持って300年、なくなってから100年ちょっとしか経ってないから、お上のもの侵すべからず、という意識がまだまだ抜けないということなのだろう、いえ徳川さんにはこれからもお世話になると思いますけれども、お気を悪くされないように。。。(あ、美術館さんもお気を悪くされないように。。。て突然われに返ってどうする)

 

で、ゴッホもルノワールも兎に角名画という名画はいくらでも見られる。西洋絵画を勉強(美術史でも絵描きでも)する奴は一度住んでみないと損でしょう。NY家賃高いけど。

 

メルマガにも書きましたが、現在日本コーナーでは狩野派の特集をやっております。狩野山雪の屏風絵(老梅図)が一応目玉。
http://www.metmuseum.org/calendar/ca_event.asp?OccurrenceId={12365ef6-956b-4e5a-9c5a-09622a4ab582}
http://www.metmuseum.org/Works_of_Art/viewOne.asp?dep=6&viewMode=0&item=1975%2E268%2E48a%96d
私としては、かわなべきょうさい、の鷹図の四対(ただし額にしてある)に注目。

 

すごいぜ、暁斎。

照明を落としてあるので、迫力に気づかない人もいるかもしれないが。光に弱い日本画は、派手な演出(照明で)しにくいのが辛いかな。だけど、観客席を暗くして、屏風にろうそく風の光を当てるなど、色々やれることがあるでしょう。すでにいろんなところでいろんな試みはあったと聞いてます。狩野派は長く続きすぎて(桃山から明治初期まで)、最後は(暁斎や雅邦はともかく、江戸中期から末期)力がなくなって、緊張感に欠けるものが多いけれど、いいものも沢山あるので、評価はされるべき。逸品が集まったとはいえないけれど、”Kano-School”をやろうじゃん、という企画力があるだけでも、たいしたもんじゃないだろうか、たぶんこんな程度でほめていたら甘いのだろうけれどね。もっといいもの集めろ!くらい言わないと。

 

夜は21クラブという高級店で断られ(予約して来いということ)寿司屋さんに行く。一番有名なところ。すし花かな。板前さんとずーっと会話。すし屋に来ると日本語をしゃべれるのがステータス、みたいな気になれる、思えば日本語デーであった。


 

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