銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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「一蓮托生」展見に行きました

   

成山画廊さんに、諏訪敦の展覧会を見に行きました。
他の画廊さんのことはあまり書かないのですが、とても面白いので少し言及します。
諏訪敦 絵画作品展 「一蓮托生」
いろんな人から噂を聞いてとても興味を持っていたものの、行くキッカケがなかったこの画廊さんに初めての訪問となりました。
ウチで扱わせてもらっている阿部清子女史のお誘い。
なにしろ、この個展、まず上記のHPの挑発的ともいえる成山さんの言辞が面白い。
「『写実』という差別用語で語られる多い画家」、という作家へのステレオタイプでくくられる事への抵抗。このテキストだけでも、この画廊が凡百のコンセプトで運営されているものではないことが想像できます。
で、靖国神社で集合して参ったのですが、古風でアーティスティックな佇まいを持った不思議なビル。思った以上に狭い空間に、作品がふたつ、みっつ、よっつ・・。解放された出窓の向こうに見える新緑がまぶしい。
面白い作品ばかりでしたが、松井冬子氏を描いたとおぼしき、HP上にも見られる、”差別用語”「写実」で描かれた作品は必見であります。この画廊と、松井氏のエネルギーに拮抗するべく、緊張感を持って描かれた『花を食べる』。黄色い花粉が絵肌を飛び散り、土佐派の「炎」のような、花弁を絞った花汁がほとばしるような赤が画面を横切る。怖さと美しさがある。
銀座とか清澄白河とか画廊が密集するところから背を向けたような九段坂上に居を構えたこの画廊さんの個性は、「銀座」というブランド共同体に身を置く自分とは対照的なんですが、このひとならではの必然性が感じられて、強く印象に残ります。
「美」と「アート」、「芸術」、「工芸」という分類のどこに身を置くか、美大ヒエラルキーとか団体展のどこに身を置くか、という表層的な選択肢もしばしば話題になるけれども、もっと心の奥底の立ち位置がどこか、という事で、人の行動の選択は決まる。私は私の出自やエネルギーやしがらみで此処にいる。
この「画廊」をテーマにした作品展というさりげないけれども、前代未聞のテーマ展は、この画廊でなければ成り立たないテーマでもあって、とってもおもしろいと思います。NHKでも放映されたようなので、今後は混むかも知れませんね。

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