銀座の画廊で働く社長ブログ

秋華洞の社長、田中千秋オフィシャルブログ。 近代絵画・古美術を扱う美術商。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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すみだ北斎美術館、今日、開館です

      2016/11/29

すみだ北斎美術館が本日、開館する。

昨日は、レセプションパーティにお招きいただき、参加してきました。

大きな会場に立錐の余地もない人びとの数。ひとつのプロジェクトを成し遂げるのには之だけの人数の協力があってのことなのだと驚きました。

(すみません、文章書いている間に、中断が有り、以下、ですます体からである体に変わります。。。)

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挨拶に、現区長、館長を始め、地元議員の松島みどり氏、文化庁長官の宮田亮平氏、設計の妹島和世氏、前区長(すみません、名前を失念)の方などが立った。

みなさんが異口同音におっしゃっていたのは、海外で北斎の事業に携わっていると口にした時の人々の目の輝きだ。

その名前を口にしただけで世界の人の敬意を呼び起こす、そうした名前は日本人では「Hokusai」以外に探すのは難しいかもしれない。

松島さんは国内の浮世絵より、モネなどの印象派に興味があって、印象派を通じて浮世絵の世界を知った、ゴメンナサイ、というトークを披露していたが、その後にお話になった宮田さん(芸大の前学長)は、浮世絵があったからこそ、印象派がなりたったのだ、と補足されていた。浮世絵が世界に与えた衝撃の中心に、北斎がいた、と私も思う。

妹島さんも同じく「Hoksai」の仕事をしていること自体に感心された経験を述べていた。設計は斜線をそこかしこに取り入れた遊び心のあるデザインだが、北斎のあのシャープな奇想天外な画面設計に習ったものなのであろう。

しかしスピーチの中で一番印象に残ったのは前市長のそれであった。28年前に構想してからオープンまでとうとう漕ぎ着けたことに「感無量」であると述べられた。区立で大きな事業をまとめることには様々な障害があったことと思う。

 

パーティ後、プレビューを見せていただいた。展示室に、私達が納めさせていただいたものもいくつか見かけて、とても大事に扱っていただいていることに感銘を受けた。一方で、北斎と応為が作画している情景が精巧なロボットで表現されていて度肝を抜かれた。生きているような二人の像だ。これは、子どもたちの人気の展示になると思う。名だたる美術商や学芸員の方々が、キャーキャー言って喜んでいた。オトナでもはしゃいでしまう出来栄えだ。勿論私もキャーキャー騒いだ。

ところで、北斎が浮世絵の中心にある、と表現したが、実は、北斎の存在感は、他の浮世絵師から見て、図抜けた存在だ。浮世絵を扱う美術商としては、北斎の作品はしょっちゅう手にしているわけだが、三代浮世絵師、歌麿、広重とくらべて、発想の斬新さ、表現の特異性は群を抜く。そして自由だ。動きのある人物描写の細かい表現は、他の浮世絵師の追随を許さない。また、ベロ藍を主色として用いた幾つかのシリーズは、その摺り技法自体が作家世界のオリジナルで、画家がある位置を占めるべきときに必要な表現技法の独立性が見事に確立されている。現代画家も、北斎ひとりの画業を追うだけでも、多くが学べると思う。この墨田エリアが、この美術館を中心として、若い画家の発想を鍛える場ともなれば、よいと思う。

今日の初日は、どうも大変な入館者数のようだ。しかしながら、美術館のオープンは、株式の上場と同じで、ゴールでなくスタートだ。今後も大勢のお客様が来てこそ、墨田区の成功といえる。近くには江戸博もあり、このあたりが江戸時代から続く江戸文化の発信地として根付くがどうかがとても大事な要素だ。私達としても、微力ではあるが、できることをやっていきたいと思う。

 

 

 

 

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