秋華洞スタッフブログ

日本の古美術・近代絵画を軸に、浮世絵、古典籍、その他書画骨董。茶道具、西洋美術品も扱います。

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「あやしい絵」展と橘小夢

   

東京国立近代美術館で始まった「あやしい絵」展。

大変人気を集めているようで、先日開催されたばかりに行きましたら、
平日に関わらず、長蛇の列。
人はやはり「あやしい」ものに惹かれるのでしょうか?
展示作家は、「あやしい」といえば真っ先に頭に浮かびそうな甲斐庄楠音、岡本神草、 秦テルヲ 、
近代美人画からは上村松園の「焔」、鏑木清方は「妖魚」「刺青」、
さらに最近企画展が続く小村雪岱、 洋画からは青木繁、藤島武二、
海外からロセッティ、ミュシャ、バーン・ジョーンズなど作家のピックアップや見せ方も面白かったです。
また、秋華洞でも以前企画展示をし、こだわってきた橘小夢の作品も多く展示されていて嬉しく思いました。
作品の多くが関東大震災で消失したこともあり、
現存する作品が少なく、「幻の画家」とも言われています。
こちらは「水魔」ランプの本シリーズの橘小夢(河出書房新社)の表紙にもなっています。
橘小夢「水魔」
「水魔」が発表されたのは昭和7年、神田三省堂にて開催された橘小夢個人展覧会でのことです。
しかし発表後、内務省からの発禁処分を受け、数百枚制作された「水魔」は全て没収されることなりました。
そのほとんどが焼き捨てられたのですが、何枚かを取り置くことが内緒で許されたそうです。
おそらく「裸の女性が描かれている」という理由から下された発禁処分であったのでしょうか、
水面を思わせる波紋や、波のような表現、水底から立ち昇る泡といった多視点的な描写は、
扇情的というよりもむしろ、どこかあやしく幻想的な印象を作品にもたらしています。
今回、この水魔の一筆箋がミュージアムグッズとして販売されていましたが、
なんと、こちらの作品もグッズに。
橘小夢「嫉妬」
石童丸物語、または刈萱物語として知られる伝説を主題とした一作。
筑後の侍、加藤左衛門尉繁の正室と側室がスゴロクをして遊んだあと、うたた寝をしています。
一見仲良く見える二人にうずまく嫉妬を蛇のような髪の毛で表しています。
緊密な曲線と息苦しいまでの点描が、狂気に近いほどの嫉妬を感じさせます。
グッズはこの「嫉妬」をモチーフにしたトートバッグ。

 

社長の田中はグッズコーナーで真っ先に買い、早速使っています。
 
 
この他小夢作品は、谷崎潤一郎の小説をモチーフにした「刺青」「高野聖」「水妖」「若菜姫」「安珍と清姫」などが展示されます。
展示期間もそれぞれ違うのでスケジュールは要チェックですね。

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