秋華洞スタッフブログ

日本の古美術・近代絵画を軸に、浮世絵、古典籍、その他書画骨董。茶道具、西洋美術品も扱います。

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酒呑童子

   

根津美術館で開かれている「酒呑童子絵巻 鬼退治のものがたり」に行ってきました。

都の貴族の娘たちを次々に略奪する酒呑童子(しゅてんどうじ)という鬼を、

源頼光、藤原保昌、そして頼光四天王と呼ばれる渡辺綱、坂田公時、碓井貞光、卜部季武が退治する物語は14世紀には成立していて、

多くの絵巻物や奈良絵本に描かれて普及しました。鬼の住みかによって、大江山系と伊吹山系の2系統に分類されています。

根津美術館が所蔵している3巻はいずれも伊吹山系で画風も制作年代も異なります。

今回はその3巻すべてが展示されていますが、中でも住吉弘尚の8巻本が全巻初公開。

鮮やかな絵の具で描かれた生き生きした場面。

ショーケースに沿って歩きながら、「次はどうなる?どうなる?」とドキドキワクワクが止まりませんでした。

この酒呑童子、もともとは美しい稚児をいう設定なのですが、

素朴なタッチで描かれた室町時代の絵巻では鬼の姿になった酒呑童子が大きな口を開けて寝ている姿が描かれなんともコミカルでした。

(チラシの裏面にその様子があります)

ところで酒呑童子は昨年は歌舞伎も上演され、宝塚でも取り上げられたこともあるそうですが、浮世絵でも多く描かれています。

国芳「大江山酒呑童子」

人間から鬼になる瞬間を描いています。

同じく国芳の作品。

国芳「頼光大江山入之図」

さて、酒呑童子といえば思い出されるのが歌川芳艶のこの大迫力の作品。

芳艶「大江山酒呑退治」

芳艶は国芳の門人でこうした酒呑童子退治の伝説や、『椿説弓張月』、

『自来也説話』などの読本を主題とする作品が多く、勇猛な武者とともに、

妖術を操る人物や巨大な化物を大胆な構図で描く点に特色があります。

モダンな酒呑童子は玉村方久斗です。

玉村方久斗「酒呑童子」

近松門左衛門の研究者、木谷蓬吟が編集した「大近松全集」に
付録としてつけられていた木版画です。シリーズには上村松園や島成園、

北野恒富、岡田三郎助らも参加しています。

「酒呑童子絵巻 鬼退治のものがたり」は今月17日まで。

根津美術館は庭園も楽しめますし、ふらっと訪れてみてはいかがでしょうか?

 - 展覧会, 浮世絵