秋華洞スタッフブログ

日本の古美術・近代絵画を軸に、浮世絵、古典籍、その他書画骨董。茶道具、西洋美術品も扱います。

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横浜浮世絵

   

横浜浮世絵は別名横浜絵、またはハマ絵とも呼ばれていて、

横浜という開港場の出来事を主題として描かれています。
特に外国人の風俗に強い関心を持って製作された末期浮世絵で、
制作年代は万延元年(1860)から明治5年(1872)頃、作品総数は840種、絵師は52人にのぼると言われています。
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一川(歌川)芳員 『亜米利加人』
洋服を着て椅子に座りテーブルをはさんでお茶をするアメリカ人の夫婦。
二人の仕草や視線はどこかぎこちない印象も受けるが、そうした表現が洋食器や洋服の様子と相俟って、未知なる西洋文化への興味をむしろいっそう表すようです。
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一龍斎芳豊 『ヲロシヤ人愛婦人』
ロシア人の夫婦が室内にいる様子が描かれておりその傍らには夫婦と呼応するようにつがいの鳥が描かれる。人物の衣装の衣紋線は執拗なまでにうねり、作者の異国文化に対する好奇の目が象徴されています。
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一川芳員 『異人屋敷料理之図』
異人屋敷の厨房で料理をする異国人が描かれています。当時居留地には外国人用の牛肉店やパン屋もあり西洋料理が作られていましたが、一般の日本人にとって西洋料理は未だ馴染みのないものでした。調理台で包丁で肉を切る西洋人は口を一文字に結び、真剣な面持ちをし、片手にさじを持つ中国人はストーブに欠けられた鍋の煮物の様子を念入りに見つめる。そうした表情はどこか親しみに溢れています。
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一川芳員 『外国人子供寵愛之図』
当時居留地には役人や貿易商以外の一般の日本人は入れなかったため、絵師達は外国の絵や写真から想像して作品を描くことが多かったそうです。
本作では鮮やかなドレスを身に纏う女性がすまし顔で子供を抱き、その後ろには横顔の中年女性が立っています。白塗りの室内は不自然に片側の壁が無く、その隙間から男の姿が見えます。この三人が生み出す対角線が画面の奥行きを強調し、日本とも異国とも分からぬ空間を印象的に構成しているようです。
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歌川芳艶 『蛮国人物図絵 英吉利人』
「蛮国人物図会」は江戸末期から明治初頭の作家・仮名垣魯文の合巻で、芳艶がその挿絵を描いています。
本作ではややぎこちない格好で鉄砲を持って立つイギリス人男性が描かれています。人物が絵のモデルらしいポーズをとるこうした描き方は、このシリーズ以前に同じく魯文の合巻で当時人気絵師であった芳虎が挿絵を描いた「万国噺」から端を発しているそうです。顔や衣装の陰影法を思わせるような表現はこれまでの美人画や役者絵とは異なる、横浜絵に独特のものです。
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歌川芳員 『英吉利人』
黒い制服をきた男性が画面左側に直立し、その見つめる先には三人の男女がこちらへ向かって歩いています。
建物の縁にそって奥行きが生みだされ、また手前の男性が持つ鉄砲と後ろで掲げられるイギリス国旗が画面の垂直軸を強調しています。こうした遠近法に引きずられたような直線的な構図は横浜絵に特徴的で、画題のエキゾチシズムとともに、これまでの浮世絵とは異色の様相を呈しています。
外国人は慣れない異国での生活、日本人は初めて目にする青い目の人々や舶来品の数々。
全体的にぎこちない雰囲気や距離感が漂っていて、描く側と描かれる側、双方の戸惑いが伝わってきます。
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