銀座の画廊<秋華洞>社長ブログ

美術を通じて日本を元気にしたい! 銀座の美術商・田中千秋から発信—-美術・芸術全般から世の中のあれこれまで。「秋華洞・丁稚ログ」改題。

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八重の櫻、というNHK大河、なかなかいいでないですか

   

 NHKには常に空疎な明るさと生真面目さがあり、そしてどこか傲岸不遜とサボタージュの暗さが巣くっている気配がある。その象徴のひとつが朝のドラマと大河ドラマであった。紙芝居のような明るい画面と形式化された演技。だからたいてい、見なかった。
 しかし、たまにNHKは驚くような率直な感動を直球で投げ込んでくることがある。たぶん良きNHKに入ったという気概のような社員の魂が偶然シンクロするとこうしたものが作られるのだろう。Nスペも、ドラマも、いいときはとてもよい。大河ドラマについては、龍馬伝以来だと思うが、ハイビジョンの暗闇撮影能力を生かしたドラマ作りにはまり込んできた。あの映像至上主義はいささか疲れた。たとえば「平清盛」では、ただひたすらにその映像の嘆美を追求し、しかしドラマはNHKらしい空疎さをきわめ、何の面白さもついにアピールすることができなかった。平家納経の美しさに象徴される平清盛の巨大な理想主義を見たかった自分にはとても残念であった。途中で見るのを断念した。
 しかし、「八重の櫻」は様子が違う。今度は、かなり面白そうである。映像は、昔の明るい照明の張りぼて画面からは進歩しているが、清盛や龍馬の画面の暑苦しさはない。テレビ的な美しさをよく計算しているが、押しつけがましくはない。
 なんといっても、第一話の綾瀬はるかの少女時代を演じた子役は素晴らしかった。そして、綾瀬はるかも相変わらずの天然ぶりを見せるが、おおむね好感が持てる。この人を憎んだ人は誰かいるのだろうか。このひとの「ひたむきさ」の芝居を見ていると、毎度おなじみとはいえ、どうしても何か愛情に近いモノを持ってしまう。ドラマの運びに無理がなく、演技に切れもある。ほかの大河との、この違いはなんだろうと思うが、ひとえに台本の出来ばえには集約されるのだろう。題材も新鮮である。そして、要所要所に配置されるベテランの芝居が嬉しい。八重の母を演じる、風吹ジュンは相変わらず、いいオンナである。
 このドラマは、八重という女性の、「鉄砲時代」「同志社大学創設時代」「ナイチンゲール時代」を描くそうである。ひとの人生には必ず何かしら転換点があると思うが、彼女の場合は、維新とその後の騒動で天地がひっくり返るような中、そして命の保証がないなかを、自分の筋を通して生ききった女性のようである。女性は特に添った男性の生き方で人生の様相が変化すると思うが、男もまた、思わぬきっかけで人生が変わる。私の場合も、転換点がいくつもあったので、共感出来るところがある。そのとき一番大事なのは、自分の人生のスジは何なのか、ということであろう。柱、背骨、ポリシーと言っても良い。「八重」にとっては何だったのか、ドラマを追うなかで、見ていきたいと思う。
 

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