秋華洞スタッフブログ

日本の古美術・近代絵画を軸に、浮世絵、古典籍、その他書画骨董。茶道具、西洋美術品も扱います。

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和巧絶佳展 令和時代の超工芸

   

東京新橋にある、パナソニック汐留美術館で開催中の「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」に行ってきました。

令和時代とあるように、若手アーティストの作品を集めた展示になっています。

会場のトップバッターはデザイナーの舘鼻 則孝さん。

その作品はメトロポリタン美術館やヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に所蔵されており、

レディーガガさんが着用して一躍脚光を浴びたヒールレスシューズでも知られています。

「Heel-less Shoes」

Homage to Taro Series

自身のプリミティブ・アートの象徴とも言える岡本太郎へのオマージュとして制作されたシリーズ。

2016年から2017年にかけて岡本太郎記念館で展覧会も開催しています。

 

「Floating World」

花魁の高下駄をモチーフにしたシリーズ。

「日本古来の文化を見直し、その延長線上に表現する」ということを重要視している舘鼻さん。

浮世絵などに当時の風俗として描かれているこうした花魁の高下駄も

現代を生きる自身のアイデンティーと重ね合わせ、新たなものを生み出しています。

こちらは「截金(きりかね)」という手法で制作活動をしている山本茜さんの作品。

「渦」

截金とは、細金とも呼ばれ金箔・銀箔・プラチナ箔を数枚焼き合わせ細く直線状に切ったものを、

筆と接着剤を用いて貼ることによって文様を表現する伝統技法で

仏像・仏画において仏様や菩薩様が身に着ける着衣や甲冑などの装飾で使われます。

山本さんの場合、截金その装飾という役割を解き放ち、もっと自由で純粋な表現方法でできないか考えた時に

ガラスの中に閉じ込めるという手法を思いついたそうです。

截金硝子長方皿「流衍」

近づいてで見ると・・・。

山本さんは「源氏物語」を立体で表現することライフワークにしていて、

関連作品も展示されていました。

鋳金(ちゅうきん)という手法にこだわって制作している髙橋賢悟さんの作品。

鋳金は一度金属を溶かして方に流し込み成形する技法。

髙橋さんの場合、主にアルミニウムを用い、現物鋳造で0.1ミリの薄さを可能にしています。

髙橋さんは東日本大震災をきっかけに「生と死」をテーマに無数の小花が頭蓋骨を形作る「flower funeral」シリーズに取り組んでいます。

漆芸の池田晃将さん。

漆芸、螺鈿というと正倉院宝物に「螺鈿紫檀五絃琵琶」があるほど古い技法ですが、

その技法で数字型に切り取った貝殻を木地に貼っていくことで未来を感じさせる令和の工芸として昇華させました。

数式配列檎棗

 

「Neoplasia-engineering」

この模様を構成している数字型の貝はレーザーで点線を彫り、

それをメガネを洗浄する超音波洗浄の器械にいればらばらにしていくそうです。

正倉院御物でも漆芸はある。1000年は少なくとも保存できるということがわかっているので、

1000年先も作品が残るということを考えて作品を作っていると語る池田さん。

令和の時代に制作した作品が、1000年先にはどのように見えるのでしょうか?

なお、池田さんは11月にぎゃらりい秋華洞で開催される展覧会「素材のチカラ」にも出品します。

このほかにも日本の美意識、技を受け継ぎながら、自由な発想で新たな息吹を吹き込んだ作品が並びます。

9/22までパナソニック汐留美術館、その後みやざきアートセンター、アサヒビール大山崎山荘美術館に巡回予定です。

 

 

 

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