秋華洞スタッフブログ

日本の古美術・近代絵画を軸に、浮世絵、古典籍、その他書画骨董。茶道具、西洋美術品も扱います。

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西園寺公望 終の住処 『坐漁荘』

   

坐漁荘は、明治の元老 西園寺公望が70歳を迎えた大正8年に
老後の静養の家として静岡県の興津に建てられました。

今は明治村に移築されていますが、
忠実に再現されたものが、もとあった興津清見寺町にひっそりと建っています。
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数寄屋造の建物で、至る所に藤の蔓や竹、杉の皮などを使用し、自然を美しく取り入れています。

当時は正面に海が一望できたようで、さぞや素晴らしい景色だったことでしょう。

現在は残念ながら海ではなくグラウンドが見えます。惜しい!

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当時、ここから見える景色の1/3は海だったそうです。

ちょっと写っているのはガイドさん。

2階床の間

西園寺家は宮中の琵琶奏者の家系なので床の間に琵琶台があります。

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左奥が琵琶台
立派なくろ松の一枚板使用。

景色もいいし、開放感もあるし、のんびり過ごせそうな家と思いきや、
そこはさすが政治の要人の住まい。

お風呂、洋間、トイレなど防犯ブザーが至る所にあり、
廊下は侵入者に気づきやすい『うぐいす張り』
竹の格子の中には、実は鉄筋が入っていたり
お風呂から脱出して、コンクリート造りの書庫兼シェルターに避難できたり…
と実はすごい厳戒態勢なのです。

2.26事件の後にはなんと50人体制で警備に当たっていたそうです。

ここでのんびり余生を送ろうと願っていた西園寺公ですが、
世の中が大きく変動する中 ひっきりなしに訪問者が訪れ、結局願い届かず…。

使用している窓ガラスは『バイタ•ガラス』と言って、西園寺公の健康に留意して真っ先に取り入れたそうですが、このガラス、紫外線をよく通すもので、当時は紫外線は健康に良い物とされていたそうです。現代はUVカットが主流。どうやらこの100年近い間に紫外線は敵になってしまったようですね。

なんと入場料無料。ガイドさんが親切丁寧に説明してくれます。

とてもゆったりとした時間を過ごすことができました。

興津 坐漁荘
http://www.shimizu-net.com/shimizu/kankou/5-okitu/5-8zagyo.htm

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