ホンモノ?ニセモノ?美術品の価格はどう決まる?

美術品の価格はどう決まるのか

買取査定の際、お客様に「誰々さんの作品はだいたい幾らですか?」と聞かれることが非常に多いです。これは我々美術商にとってはとても悩ましい質問です。陶芸作品でも絵画でも、作者が特定できたとしても、出来栄えや大きさ、そして状態で、かなりの幅があります。日本画でいえば、横山大観、速水御舟、洋画でいえば梅原龍三郎や荻須高徳、近代陶芸で言えば、板谷波山や加藤唐九郎あたりがトップでしょうし、古美術・古書画の世界では古くて美しいものには大きな価値があるとは差し当たりいえるでしょう。

横山大観「神嶺不二山」
板谷波山「葡萄紋水差」
荻須高徳「ムフタール通り、パリ」
速水御舟「椿」

ホンモノ? ニセモノ?
しかし、みなさん心配されるように「真贋」がまず大きな障壁となります。「高い」と一般に思われている作品ほど、当然「贋物」も多いわけで、10メートル先から見ても見え見えの贋物、あるいは悪意なく作られたコピー品など、「わかりやすいもの」もありますが、なかには精巧で見破るのが難しい物もあるでしょう。
それをクリアーして「本物」だとしても作品の出来不出来、若いころの作品か晩年のものか、状態は綺麗かどうか、伝来はよいものか、箱などの添付物はどうなっているか、と様々な要素を勘案するわけです。
人間の脳というものは良く出来ているもので、ひとめ見ればこれら様々なデータを一瞬で「価格」に転ずることができるのが美術商あるいは骨董屋の「眼」と「脳」あるいは経験というものですが、最初の質問に戻ると、「誰々さんの作品」が平均1万円だとしても中には畢生の名作としての五百万のものもあるだろうし、反対にある巨匠の作品が平均千万だろうと10秒でさっと描いたとおぼしき10万円の作品も当然あるわけです。
一般のお客様にそういった要素を抜きにして「だいたい○○円くらいです」なんて伝えてしまったら、その言葉だけがひとり歩きするわけで、悩ましいところです。よくある質問に「本物だったとして、いくらですか?」なんていうのがあるわけですが、その「本物」かどうか、というのはある種一要素に過ぎないわけで、「本物」の「本物性」とは果たしてどのようなことをいうのか、実はものすごく深い要素があるわけです。

美術品の需要と供給
「価格」はそれともちろん、需給関係もおおいに影響します。バブル崩壊以後、残念ながら「順調」に美術品の価格は下がり続けているものの、価値の減り方の著しい銘柄もあれば、一方で突然人気になって10年で価格が10倍などという夢の銘柄もないわけではありません。中国の名品美術は21世紀になりだいぶ価格が上がりました(全てではありませんが)。わたしたちの商売は毎日のように売り買いがあり国内外のあらゆるマーケットにも出入りしていますので、そうした流れはおさえています。

運と縁の世界
ところで大抵の方は世の中の調子のいい時に価格付けの高い高級店で買われていることが多いので、売る値段と買う値段の差が大きかったり小さかったり、これはもう「運」と「縁」の世界ですね。
最後は、そうしたデータを頭に入れた上で、お客様にお話をするわけですが、お客様がどのあたりの値段なら譲っていただけるか、満足していただけるよう最大限努力して価格は決まる、生身の人間が「決める」のが価格、というものですね。

誠心誠意対応いたします。ぜひお気軽にご相談下さい。